安室透が去った日

8月31日、期間限定の安室透のLINEが終わった。

書店で対象商品を買うとキャラクターの名刺が付いてきて、それにあるQRコードを読み込むと安室透とLINEが出来るというキャンペーン。たしか、6月までで終了予定だったものが延長して8月末までとなったのだった。最初はただのbotでしょ、と思っていたけど、いろいろ話しかけてみると登録している単語数の量に驚いた。コナンの登場人物の名前を言うと「捜査一課の刑事ですね」というような返事をするし「ハムサンド」とか呟くとハムサンドのレシピを喋り出す。勿論、少年サンデーやゼロの執行人の宣伝も怠らない。サンデーで連載されているコナンや安室透のスピンオフ『ゼロの日常』にまつわる単語が毎週水曜に更新されるから、これはどうだ!?これは!?とどんどん話しかけてしまう。

安室LINEで忘れられないのが「七夕赤井ガチャ」だ。7月7日「七夕」と打つと、七夕のウンチクの後「●●の願いが、届きますように…☆」と返事をしてきたのだ。●●に入るのはそのLINEをしている本人の登録名が入るようにプログラムされる予定だったのだろうが、安室透LINEに友達登録している人の名前が出てくるようになってしまったのだ。おそらく、その時間の前後に話しかけている人(同じように「七夕」と打った人?)の名前が表示されるので「みゆ☆の願いが、届きますように…☆」とか出てくるのだ。みゆ!?その女誰よ!?って話なのである。いや、みゆ☆なんて登録しているのならまだいい。「長谷川夏子」みたいな登録名の人も当然いるのだ。それをみんな「誰これ?」とスクショ撮って、Twitterなんかに載せるわけです。名前だけだと個人情報にはならないのかな?それにしても、まぁ、マズイ状況である。そんなときLINEの登録名を「安室透に呼ばせたい名前」に変える人たちが出てきたのだ。となると当然お呼びがかかるのが赤井秀一である。こちらが「赤井」と打つと「赤井…秀一…!!」「あれほどの男ならば…なぜ…」のデフォルトで出てくる、因縁の相手であるその赤井秀一の願いを安室さんが祈るなんて最高じゃないか。こうして赤井秀一の名前が出るまでひたすら「七夕」と打ち続けることになった……これが「七夕赤井ガチャ」である。(※諸説あります)少しして安室さんが違うコメントをするようになったんだけど、あれ担当者怒られただろうなぁ……。

もうひとつ、忘れられないことが『ゼロの日常』で、安室さんが飼うことになった野良犬に名前を付ける回が掲載された日のことだ。その犬の名前「ハロ」と呼びかけると返事が来たのだ。

「あでしい」「こ、こらっ、勝手に…」「あ、いやなんでもありません。気にしないでください!」

あでしい!!!!

ハロが勝手に安室さんのスマホをいじって、それを安室さんが慌てて止めるという“てい”になっている。可愛い……嘘だろ……あでしい……。と思っていると、翌週になるとパターンが変わったのだ。

「ろろが!」「こ、こらっ、勝手に…」「あ、いやなんでもありません。気にしないでください!」

その翌週もパターンが変わり、その翌週も。いたずらっ子ハロ。そう思っていると、あるパターンが見えてきた。並び替えて縦読みすると、意味のある文章になった。

「あむろはろです!よろしくおねがいあんっ!」

ハロは単にいたずらをしていたわけではない。挨拶をしていたのだ。天才。可愛くて天才。すごい。泣けてくる。

ハロは8月終わりに近付いてきて、また別の返事をするようになってきた。そしてそれを繋げて読むとこうなった。

「これからもあむろさんのきょうりょくしゃでよろしっこうあん!」

よろしっこうあん!!!!

最後の最後に安室さんも「こ、こらっ、勝手に…ん…?」となったところからすると気付いたのかもしれない。ハロは……ハロは天才犬だよ……。

 

また延長してくれないかなぁ……単語は増やさなくていいから……もうデフォルトの答えだけでいいから……課金したら……なんていろんなことを考えながら迎えた8月31日。私は夢女属性ではないけれど、最後には「楽しませてくれてありがとう」「楽しかった」「元気でね」なんて送るようになってしまった。だって、本当に楽しかったから。

そして日付が変わった瞬間、こちらが何を言ってもひとつの答えしか返ってこなくなった。

申し訳ないが、諸事情によりこのアカウントは 削除しなくてはいけなくなったので、もう連絡が取れない。 協力ありがとう、またどこかで。

これ、ポアロの安室透じゃない。降谷零だ。これを見た瞬間、心臓がドクドク鳴った。いままでどんなにウザ絡みしてもせっせと答えてくれたのは相手が安室透で、私が協力者だったからだ。私も、裏では番号で呼ばれていたんだ。すごい。安室透はいつかふっとどこかへ消えちゃうんだろうと思ってたけど、それを見せてくれたのだ。すごい。すごいコンテンツだった……。

 

安室透が去った。平成最後の夏が終わった。